点字技能師

目の不自由な方に欠かせない点字。点字技能師は、視覚に問題がある方に的確な情報を伝えられる点字のスペシャリストに付与される資格です。正確で迅速な点字の読み書きだけでなく、福祉の基礎知識、点字に関する深い知識と技術のある人に与えられます。試験は日本盲人社会福祉施設協議会が実施し、合格者には厚生労働大臣認定の証書が与えられ、公的資格として認められます。点字技能師の総数は、令和3年秋の検定試験終了時点で419名となりました。なお本資格は幅広い年齢層の男女が目指せますが、試験を受けるためには点字資料製作の経験が3年以上あることが求められます。学科試験は、点字の基礎と歴史、表記法、視覚障害者福祉などの知識、実技試験は点字化と校正技術が問われます。点訳・点字の校正だけでなく、点字の指導、点字サインの監修など、汎用性があり、社会的に重要な役割を担う資格といえるでしょう。

主な就職先は、障害者支援センターや出版社、福祉関連一般企業などです。視覚障害者施設や専門学校、スクールなどで講師として活躍する人もいます。なお、点字資料を発行する出版社は少ないこともあり就職は狭き門となるため、資格を取得しているとアピールできるでしょう。ただし、点字の仕事だけで生計を立てている方は、日本には数十人程度といわれており、ボランティアとして活動している方も多いようです。

点字通訳者の収入は、やや低い傾向があります。現状ではボランティアで働いている人が多いことも、水準の低さの理由の一つかもしれません。将来性や安定性に関しても決して明るいとはいえませんが、点訳や点字校正だけでなく、点字の指導・監修など幅広い分野に求められる資格です。平成28年に施行された「障害者差別解消法」に伴い、点字技能師はこれからより重要性が増していくことが予想されます。

点字は文書や書籍だけでなく、街中では手すりなどの表示にも使用されており、伝達情報の間違いやミスが許されない仕事です。そのため社会的責務を自覚でき、少しの間違いにも気づける細やかさが求められるでしょう。なお受験資格として点字資料製作経験が必要ですので、経験のない方はまずは経験を積むことが必要です。

勉強方法としては、専門学校、通信講座で勉強するのが一般的です。学科試験では、障害者福祉、視覚障害者福祉、視覚障害児者の教育などさまざまな角度から出題されるため、点字に限らず、視覚障害についての幅広い知識を身につけることが必要です。また本試験を受験する方たちからの「学習に適切な参考書がない」という声に応えて、日本点字技能師協会から過去問題の正答と解説のテキストが出版されました。試験の正答と丁寧な解説をはじめ、試験当日の注意事項も記載されていますので試験対策に利用するとよいでしょう。