ふぐ調理師

ふぐは古くから日本人に愛されている高級食材ですが、テトロドトキシンという、人の筋肉の末梢神経や中枢神経を麻痺させ、死に至らしめる猛毒を持っています。実際にふぐ中毒による事故がこれまでに多数起こっており、取り扱いには専門的な知識と共に細心の注意が必要です。ふぐを捌いた後に有毒部分を専用容器に入れ鍵をかけて保管し、専門業者に処理を委託することもふぐ調理師の重要な仕事のひとつです。このように猛毒を含むふぐの調理は厳格な管理の下に行われるため、ふぐ調理師免許の取得が義務付けられています。また、ふぐ調理師になるには、国家資格の調理師免許も必要です。なお、資格名称は都道府県ごとに異なり、例えば、大阪府では「ふぐ取扱登録者」、ふぐの名産地山口県では「ふぐ処理師」と呼ばれています。名称だけでなく、各都道府県の自治体により受験資格や試験内容なども変わりますので、取得した資格は原則免許を取得した都道府県のみで有効です。そのため、別の都道府県でふぐ調理師として就業する場合は、その地域で新たに資格を取得する必要があります。認可も自治体によって異なり、除毒済のふぐの調理であれば許可が不要の地域もあれば、東京都のように取り扱い届出済証登録の認可が必要な自治体もあります。しかし、除毒作業に関してはどの自治体も許可なしに行うことができません。

ふぐ料理専門店をはじめ、ふぐ料理を扱う料亭や割烹、旅館、ホテルなど、ふぐ調理師が活躍できる場はたくさんあります。板前やすし職人がふぐ調理師を兼ねている場合もあり、日本料理やすしの技術があり、さらにふぐ調理師免許も取得していると、活躍の幅が広がるでしょう。また、食品加工会社や水産会社なども就職先として考えられます。

ふぐ調理師に限定した収入情報は分かりませんが、板前やすし職人の年収は、一般的に日本全体の年収の平均より低めです。ただし、特殊な技術を要するふぐ調理師の場合は、資格手当が付くこともあるので、少し上がるのではないでしょうか。勤務先の規模や経験によっても年収は大きく変わりますが、規模の大きな高級料理店の場合には、一般的な年収の水準を大きく超えることもあるでしょう。冬の風物詩として知られるふぐは、多数の日本料理店で取り扱っており、ふぐ調理師の免許を持ったものでなければふぐを捌くことができないため、今後もふぐ調理師の需要がなくなることはまずないといえるでしょう。

ふぐ料理に関心があることはもちろん、ふぐについての正しい知識を持ち、責任感と緊張感をもって調理に臨める人が求められるでしょう。ふぐを捌くには、皮引きを行い、有毒部分を切り離すなど、調理師の中でも特に細やかな作業が必要なため、手先が器用で几帳面な性格の人に向いている仕事です。

試験内容は各都道府県により異なりますが、概ね、筆記試験ではふぐに関する一般知識が問われ、実技試験ではふぐの解体を行います。試験対策としては、東京都の場合、東京都食品衛生協会で販売している教本と過去問題集が役に立つでしょう。また、東京都福祉保健局が毎年「ふぐ取扱者資格受入講習」を開いているようです。詳細については10月中旬頃発表されますので、参加希望の方は東京都福祉保健局のサイトで確認しておきましょう。